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インサイドセールスからファイナンスへ。社内異動で叶えた「事業により深く関わりたい」という想い

インサイドセールスからファイナンスへ。社内異動で叶えた「事業により深く関わりたい」という想い

現在の職場で「思ったように事業貢献できない」「自身のWILLを達成し成長できる環境にない」。誰しも一度はそんな思いが頭をかすめることがあるかもしれません。そんなとき、転職ではなく社内異動という選択肢があります。コーポレート ファイナンス部門(Financial Planning & Analysis Team/以下「FP&A」)に所属する山元陽作もそのひとり。旧FORCASのインサイドセールス組織のリーダーから、ファイナンス未経験でFP&Aに飛び込んだ山元に、異動を決断した背景や自身の成長についてじっくり話を聞きました。

山元 陽作

山元 陽作YOUSAKU YAMAMOTO

大阪出身、大阪在住、2児の父。2012年に関西学院大学を卒業後サービス業に従事したのち、2016年イスラエル製のデジタルマーケティングSaaSを提供する株式会社ギャプライズに...

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目次

自身が描く事業貢献をするために、未経験職種への社内異動を決意

まず、全く性質の異なる組織への異動を考えた経緯を教えてください。

インサイドセールス(以下「IS)組織のリーダーを務めていた当時、旧FORCAS事業(現 スピーダ 顧客企業分析)内で組織体制を大きく変えることになりました。IS・フィールドセールス(以下「FS」)、カスタマーサクセス(以下「CS」)の職種ごとのDivision(※)から、中堅・中小企業とエンタープライズ企業との顧客起点のDivisionにそれぞれ分けることになったんです。それが2022年1月ですね。

ユーザベースは、スピーダ・NewsPicks・Corporateというカンパニーの下に、Domain>Division(2ndライン)>Team(1stライン)という組織構造になっています

当時私はIS Divisionのリーダーとして、事業ターゲット策定のオーナーや予算策定におけるグロス領域の計画策定など、幅広い業務を担当していました。その中で、事業に対する定量分析や、それをもとにした中長期の戦略を描く必要性と重要性を、大きく感じるようになっていたんです。
 
その組織再編のタイミングで、ISリーダーの役割を 、中堅・中小企業担当とエンタープライズ企業担当それぞれのISリーダーに任せ、私は「Revenue Operation」という事業状態の定量化と中長期の戦略を描く役割を、新設することになりました。
 
ところが、異動後数ヵ月でISの成果が落ち込み始めたため、Revenue Operationと兼任でISに戻ってほしいと打診を受け、ISリーダーの育成やフォローをすることになったんです。

山元 陽作

組織体制も大きく変わっていた中で改善に向き合っていくと、「ISリーダー育成」の期待は薄れてしまい、いつの間にか自分が両組織のISリーダーのような状態になっていました。結果的に組織をまたいで、20名くらいのメンバーをマネジメントをしているような状態だったなと。
 
かつ、それに合わせてRevenue Operationという役割が減ってきてしまい、自身の事業貢献する方向性のWILLと目の前の役割のズレ、そして業務過多な状態に悩み始めました。結果的に2週間ほど休職することにまでなってしまいました。
 
復帰後数ヵ月して、後任リーダーが成長するなかで、当時のFORCASには再びRevenue Operationで取り組んでいたような、定量化と中長期を見据えた活動が必要だと考えるようになりました。でも、このときは当時の上司には「優先度が高くない」と言われてしまい……。そこから転職や起業すら考え始めました

その時期を乗り越えて、社内での異動に舵を切ったのは何がキッカケだったんですか?

たまたま関わりのあった、当時FP&Aにいた藤原さん(藤原 賢史/現 Enablement&Strategy Domain所属)に、自分のWILLとの現状をそのまま話したんです。そうしたら、「いや、FP&Aとしては、そうした取り組みがもっと必要だと思っている」と返ってきて。
 
事業部側は自分たちが抱えている分析課題について「優先度が低い」と思っているが、FP&Aとしては優先度を上げて取り組んだほうがいいことのように見えている。それぞれの視点からのギャップを感じたんです。
 
それを聞いて「FP&Aに異動すれば、自分のWILLが叶うのでは?」と思い、すぐに千葉さん(千葉 大輔/ユーザベースCFO)に1on1を入れて相談しました。

すごい行動力ですね。千葉さんの反応は?

ポジティブに受け止めてくれましたね。僕にはファイナンス領域におけるケイパビリティは全くない。でも逆に現在のコーポレート側に足りていない、Divisionリーダーの経験や事業理解はエッジになると言ってもらえました。
 
このとき、千葉さんと1on1をしてもらおうと即行動できたのは、「相談しにいく」というスタンスではなく、「FP&Aのこの角度から事業貢献したい」という想いを伝えたかったからかもしれません。
 
千葉さんに「ケイパビリティは後からついてくるから、WILLがあるならチャレンジしてほしい」と言われ、2022年10月からFP&Aに異動することが決まりました。

ステークホルダーコミュニケーションにレベニュー組織時代の経験を活かす

実際に異動してみて最初の印象は?

事業状態を理解するうえで、FP&AではPL(Profit and Loss Statement/損益計算書)を見て議論するシーンが多くあります。事業側から見ていたKPIは、ファイナンス側からしたら「PLの一部分のさらに細かく切り出したところのKPI」の話をしていることになる。まずはこの粒度の違いから理解し、慣れる必要がありました。
 
かつ、会議に出てもファイナンス用語が飛び交い、何を言っているのかよくわからないこともしばしばでしたね(笑)。

どうやってキャッチアップしてきたんですか?

異動した際のメンターとして最初に相談した藤原さんがついてくれたので、ひたすら質問しました。そのうえで用語の理解はもちろん、ファイナンスにおける主要KPIの目的や、それらが利用されるシチュエーションを理解することに努めました。
 
もちろん、今でもまだまだファイナンスの知識は足りていないと思います。たとえば、スピーダの職種別の人件費と売上やSaaSのMRR(Monthly Recurring Revenue/月次経常収益)と比較するなどして、何が人件費の適正値なのかを判断する必要があるんですが、私個人でははまだ知識と経験が不足していて、判断が難しいシーンも多いなと感じています。
 
他社はどうなのか、SaaSの現在のトレンドはどうか、スピーダの戦略や目指す姿を反映する、となると「適正な金額」には答えがない。「適正」をどう見極めるか、ここはまだまだ知識と経験が必要だなと思いますね。

山元 陽作
ファイナンスの仕事は、ひとつの意思決定の影響範囲が大きい分、怖さもやりがいもありそうですね。逆に、レベニュー組織でDivisionリーダーを経験したことで役立っていることはありますか?

FP&Aの役割のひとつとして、あらゆる角度から事業部の意思決定の精度を高めることがあると捉えています。DomainリーダーやHRといったステークホルダーとコミュニケーションしながら、関係者の利害を調整し、売上やコストの計画の落としどころを導く。そこにIS Divisionリーダー時代の経験が活きているかなと思っていますね。
 
IS Divisionリーダーは、マーケティングとFSありきで成り立つ仕事。別組織のリーダーとアラインすることがISの仕事の本質なんですよ。ステークホルダーにそれぞれの思惑があるなかで、よりよい落としどころを考えるコミュニケーションをしてきたことが、今も役立っていると感じます。

「意思決定」することで、事業に貢献している手触り感を持ちたい

今回の異動では、リーダーからメンバーへのポジションチェンジもありました。その点で、何か変化したことはありましたか?

当たり前の話なんですが、マネジメントがなくなりました。以前は20名ほどマネジメントしていたこともあったので、採用面接も多かったですし、ステークホルダー同士の会議も多かった。リーダーって本当にいろいろな会議をしているんですが、それにかける時間が大幅に減りました。
 
Divisionリーダーを務めていた頃は、なかなか作業時間が取れず、スピード感を持って自分で手を動かせないもどかしさを感じることがありました。「自分で手を動かすことで事業を前に進めることは、リーダーではなくプレイヤーだからこそできる部分もあるんだな」と改めて思っていますね。
 
一方で、自分で意思決定できることが減ったストレスは感じています。どうしても、誰かが意思決定した中での最大値をつくっている感覚があって。自分で意思決定して事業に貢献している、という意識からは離れた感じがします。

FP&Aでそうした意思決定ができるポジションになるために、何をすればいいかは見えているんですか?

意思決定できる幅を広げるためには、理想を見据えつつ、目の前の課題を1つひとつクリアしていくことの積み重ねだと思っています。人件費の適正な金額を意思決定するにしても、その判断に資する定量数値や情報の集約がまず目先の課題なのでそれを解決する必要がある。

上長である千葉さんのように経験や知識の深い方と話すことで、理想と現実のギャップが整理され、それをゴールセッティングして解決していく、この積み重ねが結果的に意思決定できる幅を増やすことにつながっていくなと。
 
実際に、理想を見据えて取り組むからこそ、私に多くの情報が集まるシーンも増えてきました。その結果、僕が意思決定する場面も徐々に出てきています。
 
ただ、FP&Aとしての意思決定は、社内のさまざまな部分に波及します。そう思うと、どうしても「本当にこの判断でいいのか」に自信を持てないシーンはまだまだありますね。

山元 陽作
ちなみに山元さんが「自らの意思決定」にこだわるのはなぜですか?

これは仕事においてというよりも、僕の価値観なのかもしれません。「自己のアイデンティティは選択によって生まれる」「選択こそ人生である」という個人的な哲学があって。だから「自分で決めたい」という想いが強いんです。
 
もうひとつは、ユーザベースで自分が携わっている事業をよりよくすることを含めて、意思決定することによる「責任」を持ちたい。事業に貢献している手触り感を得たいんです。もちろん、私が判断できないことの意思決定を、他の誰かに任せることもまた意思決定なので、他者に意思決定を委ねることに抵抗があるわけではないですが。

未経験でも信頼関係を活かしてチャレンジできる

山元さんはFP&Aに異動後、3タイトルアップしてIS Divisionリーダー時代のタイトルに戻ったそうですね! 組織にどんな貢献ができていると思いますか?

最初にタイトルアップできたのは、事業部やHRなどいろいろな部署のステークホルダーとコミュニケーションをとって、FP&Aとして伴走できる状況をつくり出せたからではないかと思います。つまり、事業部側で培ったケイパビリティを、FP&Aで活かせるようになったことが評価されたのではないかと。
 
2回目のタイトルアップは、人件費を算出するシステムの導入プロジェクトを主導し、全社貢献ができたからだと思います。当時はものすごく大変だったし、いろいろな人に助けてもらったり、引っ張り上げてもらったりして、なんとか結果を残すことができました。

3回目は、まさに「IS組織での経験値」と「FP&Aとして培った人件費関連の専門性」とを活かす形で、担当・貢献領域が大きく広がったことが評価されたのかなと思います。

具体的にはスピーダ組織の体制変更に伴い、スピーダ全体の最大コストでもある人件費の管理に加え、売上規模・複雑性ともに高い大企業アカウント統括本部領域、さらにはスピーダ組織として新しい挑戦となるスピーダコンサルティングのFP&Aも担うことになりました。

また、それ以外にもプロダクトの価格設計にもFP&Aの主担当として参画するなど、多様な領域に対して、組織の意思決定を支える立場としての責任を任せてもらえるようになったことがポイントかなと思っています。

山元 陽作
ISからFP&Aに異動して、最も成長実感があるのはどんなところですか?

IS Divisionリーダー時代は「IS」という専門性を尖らせてきた、というだけの感覚ではなく、山元陽作という人間としての仕事の進め方やインパクトの出し方を同時に身につけてきたんだと考えています。
 
FP&Aへの異動は、事業貢献する山元が武器を持ち替えた感覚に近く、ISという「剣」をFP&Aという「槍」に持ち替えた感覚に近いんです。今やっとその「槍」もちゃんと振れるようになってきたなという成長を感じています。ポータブルスキルを、職種を変えてもちゃんと使えるようになったというか。
 
もちろんDivisionリーダーから今はいちプレイヤーなので、チームとしてよりハイパフォーマンスを出す、ということに向き合うことは少ないですが、そうしたこともFP&Aという職種の中でも取り組んでいけたらなと考えています。
 
あとは、2〜3年先のことを考えられるようになってきたなと。IS Divisionリーダーだった頃は、「抽象度の高い長期のビジョン」と「短期的な四半期のOKRや年間計画」の2軸くらいでしか思考しきれない部分が多かったなと思っており、ファイナンス部門に来たことで、間にある「中期」の3軸目のことまで解像度高く考えられるようになったと感じています。

この異動によって、タイトルを下げてまで未経験のことにチャレンジするというリスクを負ったわけですが、その部分に対する怖さなどはなかったんですか?

僕はあまりなかったですね。キャリアチェンジ自体が、自分の市場価値を一時的に下げる意思決定であることはわかっていましたが、ワクワクのほうが勝ったというのが事実です。

IS Divisionリーダーとしてレベニュー組織に居続けるよりも、FP&Aに異動したほうが事業成長に関してより大きなインパクトを残せるはずだ、というWILLが強かったので、そのマインドセットでチャレンジしました。

あらためて振り返ってみて、異動によって自ら自己変化を起こすことの価値はどこにあると思いますか。

僕はユーザベースのカルチャーが好きで入社したという前提があります。同じようにユーザベースのカルチャーが好きな人であれば、転職によりそのカルチャーを手離すことなく、異動によって新しいチャレンジができるというのは、ポジティブなことだと思います。
 
大好きなユーザベースで、同じようにカルチャーに共感している人たちと一緒に働く中でキャリアを形成していけるのは、このうえなく幸せな状況だなと感じていますね。
 
あと客観的には、これまで自分が培ってきたことを俯瞰して見ることができます。FP&Aを経験した今だからこそ、IS Divisionリーダー時代を振り返ってみて、もっといい選択ができたかもしれないと思うことがあるんです。ネガティブな意味ではなくて、他職種に異動して初めて気づくことがいろいろとあります。
 
未経験での転職は、人間関係や環境の変化によるリスクがある。でも社内異動なら、未経験でもこれまでの信頼貯金を使いながらチャレンジできます。そこがよかったなと心から思っています。

山元 陽作

編集後記

採用チームと「社内異動の事例を記事化したいよね」と話していて、真っ先に浮かんだのが山元でした。彼はDEIB Empowermentシリーズのインタビュアー役を務めてくれることも度々あり、いつもニコニコしているのにインタビューでは鋭い質問するな〜と思っていたので、自分がインタビューを受ける側になったときに、どんな話をしてくれるのか楽しみにしていました。

本人は社内のメンバーに「ユーザベースなら、こういうキャリアの選択肢もあるよ」と伝えるつもりで話してくれたようですが(笑)、私としてはこの記事が社外でキャリアに悩んでいる方や、一歩踏み出そうか迷っている方に届けばいいなと思ってインタビュー&編集しました。編集していて、すごく楽しかったです!

執筆:宮原 智子/撮影・編集:筒井 智子
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